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長野地方裁判所松本支部 昭和42年(ワ)156号 判決 1968年3月27日

主文

被告は原告に対し金三一一、二六五円およびこれに対する内金二五、三〇二円については昭和三七年一二月一日から、内金二五、三二四円については同年同月一六日からそれぞれ昭和四〇年八月一日まで、内金五、二七八円については昭和四〇年八月二日から、内金一二、一九四円については昭和三七年一二月二八日から、内金一六、七八四円については昭和三八年二月一日から、内金一五、九三九円については同年三月一日から、内金一三、三七八円については同年三月一六日から、内金三、六九七円については同年三月三一日から、内金六、六八九円については同年四月一七日から、内金四五一円については同年五月一日から、内金三、〇七八円については同年六月一日から、内金一、三八四円については同年六月二九日から、内金一、〇五九円については同年八月一日から、内金五一、六〇三円については同年八月一三日から、内金四、七九七円については同年八月三一日から、内金五、九四〇円については同年一〇月一日から、内金二九、六二四円については同年一一月二八日から、内金四、三八七円については同年一一月一日から、内金一四、八一二円については同年一二月一八日から、内金一四、三三四円については同年一二月二五日から、内金三、〇九二円については同年一二月一日から、内金一四、八一二円については昭和三九年二月一日から、内金一四、八一二円については同年三月一日から、内金一三、八五六円については同年三月二八日から、内金二、四一六円については昭和三八年一二月二八日から、内金四、九五一円については昭和三九年二月一日から、内金二、七一四円については同年三月四日から、内金六、九二五円については同年三月三一日から、内金二、二四七円については同年五月一日から、内金一一、九四五円については同年五月一三日から、内金三、二二一円については同年五月三〇日から、内金一〇、五一二円については同年七月一一日から、内金一四、三三四円については昭和四〇年三月三〇日からそれぞれ支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告指定代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求原因として、

一、昭和三七年一〇月八日午後二時三〇分ころ、訴外サングー画材工業株式会社の従業員であつた訴外鬼頭兼男は、小型四輪車を右訴外会社工場前の道路である松本市出川町五九七番地先国道上に停車し、右工場から製品を運んで該小型四輪車に積み込んでいたところ、その後方から来た被告の運転する乗用車に追突され、その結果右睾丸脱出、右恥骨骨折等の傷害を負った。

二、そして右訴外鬼頭は労働者災害補償保険法(以下単に保険法と略称する)に基いて松本労働基準監督署に対し補償の請求をなしたので、同監督署ではその適否を調査した結果、右請求を認めて同訴外人に対し別表保険給付関係一覧表(以下単に別表という)記載のとおり療養補償費計金九〇、九五四円および休業補償費計金二六五、六五九円合計金三五六、六一三円の保険給付を行つた。

三、右保険給付の結果、原告は右保険法第二〇条第一項の規定により支払つた保険給付の都度右保険給付の価額の限度において、右訴外鬼頭が被告に対して有する損害賠償請求権を取得したので、右訴外鬼頭の被告に対して有する損害賠償請求権を取得するごとに、被告に対し別表記載のとおりその求償額を納入するようそれぞれ納入告知書をもつて当該金員の支払を請求した。

一方訴外千代田火災海上保険株式会社から原告に対し昭和四〇年八月二日に自動車損害賠償保障法に基く保険金額金四五、三四八円の支払がなされたので、原告においてこれを別表記載1の療養補償費金二五、三〇二円および2の休業補償費金二五、三二四円のうち金二〇、〇四六円に充当した結果、被告の負担する現存債務額元本はこれを控除した残額金三一一、二六五円となつた。

そこで原告は被告に対し昭和四〇年八月一〇日付で右現存債務額たる金三一一、二六五円およびこれに対する各納入告知後の遅延損害金の支払を督促したが、被告はその支払をしない。

四、よつて原告は被告に対し右金三一一、二六五円およびこれに対する原告が訴外鬼頭兼男に対し保険給付をなした日の翌日である主文第一項に掲記の各日から完済に至るまで(但し内金二五、三〇二円については昭和三七年一二月一日から、内金二五、三二四円については同月一六日からそれぞれ昭和四〇年八月一日まで)民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

と述べ、被告の主張に対し再抗弁として、

(一)被告は、本件債権の消滅時効が完成していると主張するが、原告は本件債権についてはいずれもその都度納入告知を被告になしているものであつて、別表のうち23、25、27、29ないし32(計金三四、四一九円)については昭和三九年八月一三日(同月一五日発送、同月一六日ころ被告に到達したもの)、33(金一〇、五一二円)については昭和四〇年一月二六日、34(金一四、三三四円)については同年七月一日被告に対しそれぞれ納入告知をなしており、納入告知は会計法第三二条の規定により消滅時効の中断事由となるものである。

なお原告は昭和四二年月八月一五日松本簡易裁判所に対し本件賠償債権たる求償金について支払命令の申し立をなしており、また残額合計金二五二、〇〇一円(別表1ないし22、24、26、28)については、被告は昭和四二年八月二四日被告の夫である訴外権宅〓を代理人として原告(所管庁長野労働基準局)に対し、口頭で「本件求償金の請求に応ずるが、一度に支払うことは無理であるから分割払いにしてほしい」旨の申し入れをなし、さらに被告は同年八月三〇日訴外柏原光雄に対し本件債務の支払についてはすべて夫の権宅〓に委任している旨述べ、右訴外権宅〓は右債務を支払う旨約束した上、被告は右訴外柏原に対し右債務の支払について異議がない旨答えて右債務の時効の利益を放棄している。

(二)次に被告は、被告が時効の利益を放棄したとしても、会計法第三一条第一項により金銭の給付を目的とする国の権利については、時効期間の経過と同時に権利が絶対的に消滅する旨主張するが、本件のような不法行為に基く損害賠償債権は私法上の金銭債権であるから、その時効の消滅は同条同項のいわゆる「別段の規定」たる民法の適用を受け、会計法第三一条の適用がないから、絶対的に消滅しない。従つて被告の代理人たる夫の訴外権宅〓が右債務について時効の利益の放棄をした以上完成した時効の効力は消滅しているので、被告の右主張は失当である。

(三)最後に仮に被告が本件債務のうちに時効の完成した分があることを知らなかつたとしても、債務の承諾をした以上時効の利益を放棄したものである。また債務者が一旦債務の承諾をした以上時効の援用をすることは許されない。

と述べ、証拠として甲第一号証ないし第三七号証、同第三八号証ないし第四七号証の各一、二、同第四八号証および第四九号証を提出し、証人座光寺要、同柏原光雄の各証言を援用した。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として

一、原告主張の請求原因一項の事実は認める。

二、同二項の事実中国が訴外鬼頭兼男に対し保険法に基く保険給付を行つたことは認めるが、その給付の日、給付の金額および種類については知らない。

三、同三項の事実中原告主張の保険給付の結果原告が右給付の限度において右訴外鬼頭の被告に対する損害賠償請求権を取得したことは認めるが、その数額は知らないし、原告が右損害賠償請求権を取得するごとに被告に対しその主張の日にその主張の金員の支払を請求したことは否認する。また訴外千代田火災海上保険株式会社から原告に対しその主張の日に主張のような金額が支払われたことは認めるが、その充当関係については知らないし、原告が昭和四〇年八月一〇日付で被告に対し主張のような金員の支払の督促をしたことは否認する。

と述べ、抗弁として、

原告主張の本件請求債権は次のとおり時効によつて消滅したのであるから、被告は本訴において右消滅時効の援用をする。

すなわち

(1)本訴請求債権は訴外鬼頭兼男が損害および加害者を知つたときから三年の間に行使しなければ民法第七二四条により消滅時効が完成する。

(2)ところで右訴外鬼頭は本件事故当日である昭和三七年一〇月八日自己の身体に受傷したことならびにこれによつて当然治療の必要と治療するまでの間休業することの必要を知つたのであるから、本件事故に伴う治療費ならびに休業による損害については同日これを知つたものであり、且つ同日被告が加害者であることを知つたのであるから、消滅時効は昭和三七年一〇月八日から進行を始めたものである。

(3)仮にそうでないとしても、右訴外鬼頭は本件事故による受傷のため直ちに藤森病院に入院し、同年一一月一七日同病院を退院したが、遅くも右退院までの間に自己が向後相当期間に亘つて治療を継続する必要があり、患部の全治するまでは就労することが不可能であるか若しくは著しく困難であることを知つたのであるから、右訴外鬼頭は本件事故による受傷のために蒙つた治療費ならびに事故当日より再就労することのできる日までの間の休業による損害および加害者を遅くとも昭和三七年一一月一七日ころまでに知つたものである。

(4)仮に治療費の損害は現実に治療を施した時に発生し、休業による損害は現実に休業した日ごとに発生するものとすれば、右訴外鬼頭はこれらの損害のうち昭和三九年八月一五日までに施した治療に伴う損害ならびに同日までの休業による損害はすべて同日までにこれを知つたものである。

(5)原告は昭和四二年八月一五日本訴債権につき支払命令の申し立をしたが、保険給付の事由が昭和三九年八月一五日までのものである別表1ないし33の金員についてはすべて消滅時効が完成しているもので、同34の金員については給付の事由の発生した日が明らかでないが、前記(2)、(3)の理由により消滅時効が完成している。

と述べ、さらに原告の主張に対し

(一)原告主張の前記事実中別表のうち23、25、27、29ないし32(金三四、四一九円)について原告が昭和三九年八月一三日被告に対し納入告知の手続をなしたこと、同33、34について原告が各主張の日に被告に対しそれぞれ納入告知の手続をしたことはいずれも認めるが、昭和三九年八月一三日になした納入告知が同月一六日ころ被告に到達したこと、別表1ないし22、24、26、28について被告の夫である訴外権宅〓が原告主張のような申し入れをしたことおよび本件債務を支払う旨確認したことならびに被告が時効の利益を放棄したことはいずれも否認する。

(二)仮に原告主張のように被告が時効の利益を放棄したとしても本訴請求債権は「金銭の給付を目的とする国の債権」であるところ、会計法第三一条第一項によれば金銭の給付を目的とする国の権利については、時効期間の経過と同時に権利が絶対的に消滅するものとしており、これにつき会計法第三一条の規定を排除する旨定めた法令は存しないので、被告が時効完成後その利益を放棄したか否かを問わず、時効完成と同時に権利は消滅に帰したもので、原告の時効利益放棄による消滅時効が完成しないとの主張は失当である。

(三)最後に被告の代理人たる訴外権宅〓が昭和四二年八月二四日または同月三〇日ころ本件債務を確認し時効の利益を放棄したとの原告の主張につき、

(1)時効の利益を放棄したといいうるには表意者において時効の完成したことを知つてなした意思表示であることを要件とするものであるところ、訴外権宅〓は昭和四二年八月三〇日ころ本件債務のうちに時効の完成した分があることを全く知らなかつたのであるから、たとえ同訴外人が国の係官に対し国から請求を受けてもやむを得ないとの発言をしたとしてもこれをもつて時効利益の放棄があつたとすることはできない。

(2)右訴外権宅〓は本件債務の承認をしたものではなく、前記訴外鬼頭と国との両方から請求されるのは不当であるからどちらか一方にしか支払えない旨を述べたにすぎず、確定的に本件債務の全部を国に支払う旨約したものではない。また被告は時効の援用権を喪失したものではなく、右訴外権宅〓が国の係官と本件債務の履行について協議したときは、民法第一四七条によつて既に時効中断の効果が発生していたもので、訴提起後になされた債務の承認は時効の援用権を失うものでないと解すべきである。

(3)訴外権宅〓が原告に対してなした債務承認の意思表示は、要素の錯誤に基くものであつて無効である。すなわち右訴外権は被告と訴外鬼頭兼男との損害賠償請求事件において請求せられた金額中には本訴債権も含まれていて、被告が右訴外鬼頭に支払を約した金六六三、二四〇円のうち未だ履行していない部分を原告に支払えば、右訴外鬼頭に対する債務はその限度で消滅するものと誤信し、右訴外鬼頭に支払を予定していた額である月額金二七、〇〇〇円宛を原告に支払い、右訴外鬼頭との間で成立した訴訟上の和解の執行力を排除しようと考えた結果原告に対し「どちらか一方にきまればそれを支払うが、月額二七、〇〇〇円の分割払いにしてもらいたい」と申し出たものであるが、本件債務の支払によつては右訴外鬼頭との間の和解に基く債務の支払を免れることはないので、これを知つていれば右訴外権は原告に対し右のような申し出をする筈がなかつたから、この錯誤は右意思表示の要素に関するものである。

証拠(省略)

理由

一、原告主張の請求原因一項の事実は当事者間に争いがない。

二、原告が訴外鬼頭兼男に対し保険給付を行つたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証ないし第三七号証によると、訴外鬼頭兼男が入院治療を受けた労災保険指定病院である藤森病院から松本労働基準監督署に対して同訴外人に関しての診療費の請求が(別表1、3、4、6、9、11、ないし14、16ないし18、20、23、25、27、29、30、32のとおり)なされ、また右訴外鬼頭から松本労働基準監督署に対して保険法に基く休業補償の請求が(別表2、5、7、8、10、15、19、21、22、24、26、28、31、33、34のとおり)あつたので、同監督署において右各請求について調査の上これを認めて、別表1ないし34のとおり右訴外鬼頭に関する診療費として右藤森病院へ計金九〇、九五四円、同訴外人に対する休業補償費として同訴外人へ計金二六五、六五九円の支払をなし、合計金三五六、六一三円の保険給付をなしたことが認められ、これに反する証拠はない。

そうすると原告は右訴外鬼頭に関する右保険給付によつて保険法第二〇条第一項の規定に基きその保険給付の都度右保険給付の価額の限度において、右訴外鬼頭が被告に対して有する損害賠償請求権を取得したものというべきである。

三、ところで訴外千代田火災海上保険株式会社から原告に対し昭和四〇年八月二日に自動車損害賠償保障法に基く保険金額金四五、三四八円の支払がなされたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第三八号証ないし第四七号証の各一、二、同第四八号証および証人座光寺要の証言を綜合すると、原告(所管庁長野労働基準局)は右訴外鬼頭の被告に対して有する労働者災害補償保険の損害賠償請求権を取得したのち、その保険給付額につきその都度またはこれを数回にまとめて被告に対し別表(納入告知年月日)に記載のとおりその求償額(合計金三五六、六一三円)を給付場所たる郵便局、日本銀行代理店等に納入するようそれぞれ納入告知書をもつて当該各金員の支払を請求し、該告知書はいずれも普通郵便に付して被告に宛て発送していたこと(但し別表のうち23、25、27、29ないし32について原告が昭和三九年八月一三日被告に対し納入告知の手続をしたことおよび同33、34について原告がその各主張の日に被告に対し納入告知の手続をしたことは当事者間に争いがない)、しかるところ自動車損害賠償保険会社たる訴外千代田火災海上保険株式会社から原告(長野労働基準局長)に対し応償額として金四五、三四八円を交付する旨の連絡が昭和四〇年八月二日にあつて同日その応償額を原告が受領したので、原告は右応償額を別表1の療養補償費金二五、三〇二円の金額および2の休業補償費金二五、三二四円のうち金二〇、〇四六円に充当した(従つて2の休業補償費の残存求償額は金五、二七八円となつた)結果、被告の負担する(保険法第二〇条の規定による)損害賠償額は既求償額の合計である金三五六、六一三円から右の自賠応償額たる金四五、三四八円を控除した金三一一、二六五円になつたとして、被告に対し昭和四〇年八月一〇日付で右金三一一、二六五円を納付書により郵便局等に払込むか長野労働基準局に持参されたい旨を請求したが、被告はその支払をしなかつたことが認められる。証人権田宅〓こと権宅〓の証言中右認定に反する部分は前掲各証拠の記載および証言などと対照しても到底採用できないもので、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

なお被告は原告が被告に対し別表記載の納入告知年月日に求償額欄の金員の支払を請求したことを否認するとともに、別表のうち23、25、27、29ないし32について昭和三九年八月一三日被告に対し納入告知の手続をしたことを認めながら、右告知が同月一六日ころ被告に到達したことを否認しているが、およそ郵便に付したものは普通郵便の場合であつても特に配達不能に帰したか若しくは極めてまれに発生する郵便物紛失のような異例の場合を除き常にその受信人に到達してきていることは現在の状態に照し著明の事実であるのみならず、成立に争いのない甲第三八号証ないし第四七号証の各一、二および証人座光寺要の証言によれば、原告は原告主張の納入告知年月日に納入告知書をもつて被告に求償額を納入されたい旨の告知をなしたこと。昭和三九年八月一三日被告に対し納入告知の手続をして作成された納入告知書を同月一五日長野労働基準局から被告の住所宛に発送したものであつて、発送された右告知書はその後一度も右労働基準局に返戻されていないことが明らかであるから、右納入告知の通知はいずれもその告知の翌日ころには被告に到達したものと認むべきである。

四、被告は、原告主張の本件請求債権は時効によつて消滅したので本訴において消滅時効の援用をする旨主張し、原告は再抗弁として時効の中断を主張するので、消滅時効の抗弁および時効の中断の再抗弁について按ずるに、原告は本件請求債権につき訴外鬼頭兼男が被告に対して有する自動車損害賠償保障法第三条の権利を保険法第二〇条第一項により取得したものであるから、その消滅時効については右保障法第四条により民法第七二四条の消滅時効の規定に従うものと解すべく、また右訴外鬼頭が前記事故によつて蒙つた損害について、本件のように国がその損害賠償請求権を取得する場合にあつては、同訴外人が現実に治療を施した時に治療費の損害が発生し、休業による損害も現実に同訴外人が休業した日ごとに発生するものと解するのを、相当とするので、別表1ないし33の金員については遅くとも原告が本訴債権につき支払命令の申し立をなしたことが一件記録上明らかな昭和四二年八月一五日までには時効の中断がなければ消滅時効が完成すべき筈のものである。しかるところ原告は前記認定のように右訴外鬼頭の有する損害賠償請求権を取得したとしてその保険給付額につきその都度またはこれを数回にまとめて被告に対し別表納入告知年月日に記載の各日に同表求償額欄に記載の各金額を納入せられたい旨の告知をそれぞれ納入告知書をもつてなし、同告知はいずれもその告知年月日の翌日ころ被告に到達しているものと認むべきであつて、右の各告知は法令の規定に基き国がなす納入の告知に該るものであるから、会計法第三二条により時効中断の効力があるものというべく、従つて別表1ないし33についてはいずれも国が被告に対してなした右各納入告知によりその消滅時効は中断するに至つたものとみるのが相当であり、また別表34の金員については前記説示の事由により昭和四〇年三月二九日に給付事由が発生したものであつて、しかも同年七月一日に納入告知が国から被告に対してなされているのであるから、同日をもつてその消滅時効が中断するに至つたものというべきである。したがつて被告の消滅時効完成の抗弁は採用するに由ない。

五、果してそうだとすると被告は原告に対しその求償金額の合計額である金三一一、二六五円およびこれに対する別表の各給付額について原告が訴外鬼頭兼男に対する各保険給付をなした日の翌日である主文第一項に掲記の各日から完済に至るまで(但し別表1については保険給付の日の翌日である昭和三七年一二月一日から、別表2については同じく昭和三七年一二月一六日からそれぞれ前記保険会社から応償額が原告に交付された日の前日である昭和四〇年八月一日まで、従つて2の残存求償額たる金五、二七八円については右応償額交付の日である同年八月二日から完済に至るまで)民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を免れないものというのほかはない。

六、しからば被告のその余の主張について判断するまでもなく、原告の本訴請求は正当であるから全部これを認容することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

別紙 保険給付関係一覧表

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